反訴の提起について

オープンレターの差出人のうち12名が、私を被告とした債務不存在確認訴訟を提起したことについては、既にご報告した通りです
この度、上記12名に対し、100万円(1人当たりではなく総額)の損賠賠償の支払いと謝罪広告を求める反訴を提起しました。
この訴訟では、オープンレターの以下の記載が名誉毀損にあたるかどうかが問題になっています(下記2項はオープンレターからそのまま引用、敬称略)。

①「呉座氏がツイッターの非公開アカウントで過去数年にわたって一人の女性研究者(このレターの差出人の一人である北村紗衣)に中傷を続けていたこと……が明るみに出た」
②「呉座氏自身が、専門家として公的には歴史修正主義を批判しつつ、非公開アカウントにおいてはそれに同調するかのような振る舞いをしていたことからも、そうしたコミュニケーション様式の影響力の強さを想像することができるでしょう。」

(引用終わり)

①については、私が北村准教授に対して不適切な発言をしていた期間は、1年に満たないものであり、問題のある投稿は数点にすぎません。「数年にわたって……中傷を続けていた」という記載は、明らかに事実ではありません。原告らは、私が北村准教授から抗議を受けたこともない、何ら問題のない投稿を、「中傷」であると強弁しているのです。

図表1

 

②については、原告らは、歴史修正主義についての記載は、3件の投稿と6件の「いいね」を前提とした論評であり、投稿・「いいね」が真実であるから問題ないと主張しています。また、原告らは、歴史修正主義という言葉を「歴史に関する定説や通説を再検討し、新たな解釈を示すこと」として中立的に使用する場合もあるので、必ずしも私の社会的評価を下げないとも主張しています。

 

しかし、上記投稿や「いいね」は、そもそもオープンレターに書かれていません。オープンレターは具体的根拠を示さず、私が「歴史修正主義に同調するかのような振る舞いをしていた」と指弾したのです。しかも上記投稿は公開アカウント時代のもので、「非公開アカウントにおいて」というオープンレターの記載の根拠にはなり得ません。

そうすると、オープンレターの「歴史修正主義」うんぬんの根拠は、私がメモ代わりに「いいね」した他人のツイートしかないのです。私は、合計約7万件、1日に数十件の「いいね」をしており、多くのツイッターアカウントがそうしているように、必ずしも賛同の意味で「いいね」していません。しかも、オープンレターでは、私がTwitterでの「戯画化」「掛け合い」により歴史修正主義に同調したとしているのですが、そもそも上記投稿や「いいね」は、そのようなやり取りでなされたものではないのです。
オープンレターの記載に根拠がないことは明らかです。

 

図表2

また、これら投稿・「いいね」は全体の文脈の中で捉えると、いずれも歴史修正主義に同調するものではないことが分かります。

歴史修正主義」という言葉は、歴史学者にとって「学者失格」を意味する致命的な批判です。原告らの中には、歴史修正主義に関する著作がある方もいますし、彼らがそのことを知らないはずがありません。訴訟戦術でしょうが、「歴史修正主義」は価値中立的な言葉であり、私の社会的評価を低下させないという主張は、いくらなんでも非現実的で無理があると思います。

上記の他に、原告のうち、河野真太郎氏が、私が北村准教授に「セクハラ」をしたと投稿したこと隠岐さやか氏が、債務不存在確認訴訟は「悪質クレーマー」への対抗手段であるという記事を紹介して、私を悪質クレーマー扱いしたことについて、名誉毀損として、それぞれ22万円の損害賠償を請求しました。


また原告らは、債務不存在確認訴訟の提起に際し、「これは女性差別撤廃に対するバックラッシュ(反動)ととらえて、法的な手段で対抗せざるを得ないということで、提訴に至りました」「差出人・賛同人に対して繰り返されている謂れのない中傷がこのような動きを引き起こし、またそうした中傷自体、女性差別撤廃を目指す運動への反発の一環として生じているという認識のもと、法的な対抗措置を取ることを決断しました。」 と宣言しています。すなわち、原告らは、私が女性差別撤廃運動を妨害していると決めつけ、本訴訟を女性差別問題と位置付けています。

 

しかし私は、北村准教授に対する発言の中に許容できない中傷が含まれていることや、女性一般に対する発言の中に女性蔑視的・女性差別的と理解され得る不適切なものがあったことを認識しており、その点については公開で謝罪をし、北村准教授とも和解契約を締結しています。それ以降、私は過去の女性蔑視的・女性差別的な発言を正当化するような主張は一度もしていません。原告たちは、争点と関係ないにもかかわらず、私の女性蔑視的・女性差別的な発言をクローズアップし、本件訴訟を女性差別問題であると誘導し、私を反省のない女性差別主義者であるかのようにレッテル貼りをしているのです。

 

本訴訟の第1回期日は、5月13日に予定されています。
私としては、粛々と主張立証を重ねて、裁判所の判断により正当な権利の実現を目指していきます。